RESEARCH 研究成果

機械学習および粒子フィルタを用いたTEM その場変形観察動画からの転位検出および移動速度測定

私たちの日常生活を支える基盤技術として活用され始めた人工知能(AI)は、調和の取れた未来社会実現のキーテクノロジーの1つです。単純作業の自動化から、人間には困難な複雑なパターンの認識やビッグデータからの情報抽出まで、最先端研究開発のさらなる加速に大きく貢献しています。
 
当研究室では、AIの中でも、適切なトレーニングを行うことで特定のタスクを人間より効率よく行う「機械学習法」を用いて、手作業では困難な膨大なデータの定量解析や自動処理などを可能にする手法開発に積極的に取り組んでいます。
 
今回、慶應義塾大学理工学部 村松 眞由准教授グループと共同で、TEM中その場変形観察によって得られた real-time ムービーに機械学習を適用し、先端構造用鉄鋼材料において、サブミクロンサイズの欠陥(転位)が負荷応力の増加に伴い集団で間欠的な運動をする様子を自動定量化する手法を開発しました。
 
この観察では、転位が一視野には収まらない長距離を移動したため、転位群が移動するのと同時に背景が刻々と変わるという画像処理的に複雑な状況において、複数の転位を識別し、一つ一つの移動速度を測定するという処理を機械学習を活用して可能としました。
 
電子顕微鏡は物質や材料の内部の組織を詳細に可視化することができる強力な装置ですが、本開発手法により、試料の微細な変化をリアルタイムで定量的に観察することが容易になりました。構造材料の変形や化学反応などの直接観察といった研究の新たなアプローチとなることが期待されます。
 
本研究成果は2022年6月22日に「Scientific Reports」誌に公開されました。
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