JST-CREST NanoMechanics (Tsuji Team)
RESEARCH
基礎概念の紹介
本研究課題の基礎概念を含む、CREST「ナノ力学」プロジェクトにおける金属・セラミクス材料関係の研究テーマについては、「まてりあ」誌(日本金属学会会報)特集をご参照ください。
軟質相と硬質相から成る二相材料の変形機構の解明
実験:辻グループ、理論:志澤グループ
Fe-2Mn-0.1C(mass%)合金に対して独自に開発した熱処理プロセス4)を適用することによって、種々の平均フェライト結晶粒径を有するフェライト+マルテンサイト二相鋼を作製することができた。結晶粒微細化とともに強度だけでなく引張延性も増大するという大変興味深い結果が得られた。また硬質相であるマルテンサイト相が組織中でネットワーク構造を示す場合に優れた強度・延性が得られるという知見も得られた。
バルクナノメタル化したTWIP材料の変形機構の解明
実験:辻グループ+村山グループ、理論:下川グループ、志澤グループ
a) 結晶粒超微細化に伴う降伏挙動および変形モードの遷移(辻グループ、村山グループ)
b) 粒界からの変形双晶核生成のTEM内直視観察(村山グループ、下川グループ、辻グループ)
c) 粒界から変形双晶が核形成する力学場の解析(下川グループ、村山グループ、辻グループ)
d)マイクロピラー試験による核生成直視観察実験の基盤構築(辻グループ岸田)
e)転位放出による粒界構造遷移による高延性化(下川グループ)
例えば上記(a)~(c)に示すような連携研究は、密接な連携のもとで実験と原子シュミレーションモデルを直接対応・融合させることが、変形モードの核生成と変形機構の理解を著しく進展させ、本研究の進捗に貢献する新しいアイデアを生み出していくことを実証した。
TRIP・TWIP材料のモデリングとシミュレーション基盤の構築
計算・理論:志澤グループ、データ提供:村山グループ、下川グループ
FCCマトリクスを有するバルクナノメタル中でTRIP変形およびTWIP変形を順次発現させることにより、高強度のみならず高延性をも有する新材料創製を実現するために、その挙動をMulti-phase-field・転位-結晶塑性モデルによって再現し、強度と延性両立のメカニズムを解明することを目標としている。2020年度は、モデリングとシミュレーションの基盤構築を終えた。加えて、軟質相と硬質相から成る二相材料の最適組織および強度に対する機械学習に関しては、具体的な研究方針を打ち立て、プログラムコードの整備を実施した。