JST-CREST NanoMechanics (Tsuji Team)
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概要

金属材料は、高い強度と金属結合に由来した大きな延性・靭性を併せ持ち、安全で信頼性の高い構造材料として社会に不可欠な材料群である。近年、輸送機器の軽量化や建築物の巨大化などを背景に、構造材料に対する高強度化の要求が高まっている。一方で構造材料には、部材に成形するための加工性(延性)や、事故・災害時に脆く破壊しないためのねばさ(靭性)も要求される。しかし一般に材料の強度が高くなると延性・靭性は低下し、金属材料もその例外ではない。研究代表者はこれまでにバルク体を構成する結晶粒などのミクロ組織の大きさをナノメートルスケールに超微細化した金属材料(バルクナノメタル:Bulk Nanostructured Metals、または超微細結晶粒金属材料)の研究を継続的に行い、ある種の金属・合金のバルクナノメタルにおいては高強度と高延性が両立できることを発見した。これら高強度・高延性バルクナノメタルでは、特異なすべり系の転位や変形双晶、マルテンサイトといった、通常は活動しない変形モードが活性化され、それがマクロな加工硬化を向上させる結果、高い強度と延性をもたらしていた。そしてこれら異なる変形モードを担う格子欠陥や双晶・マルテンサイトは、バルクナノメタルの結晶粒界から発生(核生成)することも最近見出した。こうした結果から得られた、「ある塑性変形モードの下での加工硬化能が尽きる頃に、別の変形モードを活性化(核生成)して加工硬化を再生し、それを多段ロケットのように順次行うことによって、高強度と高延性を両立した金属材料が実現できる(図)」という着想1,2,3) に基づき、本研究計画が立案された。

図1 本研究の基本コンセプト:異なる変形モードの順次核生成による高強度・高延性材料の実現

研究グループ

研究代表者

辻 伸泰
所属

京都大学 大学院工学研究科 材料工学専攻 材料物性学講座 構造物性学分野

  • 共同研究者

    志澤 一之
    所属

    慶應義塾大学 機械工学科 総合デザイン工学専攻 マルチディプリナリ・デザイン科学専修

  • 共同研究者

    下川 智嗣
    所属

    金沢大学 理工学域機械工学系

  • 共同研究者

    村山 光宏
    所属

    九州大学 先導物質化学研究所 融合材料部門 ナノ材料解析分野

  • 研究分担者辻グループ

    岸田 恭輔
    所属

    京都大学 大学院工学研究科 材料工学専攻 結晶物性工学分野

  • 研究分担者志澤グループ

    村松 眞由
    所属

    慶應義塾大学 機械工学 開放環境科学専攻 応用力学・計算力学専修