RESEARCH 研究成果

光を一方向に進む表面波に変える人工ナノ構造の実証に成功

私たちの日常生活に欠かせない情報技術は多くの電子デバイスに支えられています。しかし、電子制御のみに頼った技術で情報処理速度を今後飛躍的に向上させることは難しく、速度に優れた光学デバイスの導入が必要です。

最近、光の伝播を自在に操るために欠かせないダイオードのような整流作用のあるナノ光学デバイスを実証しました。その動作原理は、2016年のノーベル物理学賞でも有名な「トポロジカル絶縁体とも関係が深く、電気伝導について物質内部は絶縁体であるにもかかわらずエッジ(表面や境界)だけ導体というトポロジカル絶縁体の不思議な性質を利用しています。

トポロジカル絶縁体は原子が規則正しく並んだ結晶ですが、われわれは原子の結晶を模した構造として、金属ナノ構造を規則正しく並べた人工結晶(“プラズモニック結晶”)を作製し、光に対する「絶縁体」の機能が発現するようにしました。作製した人工結晶は非対称な形をしており、これがトポロジカルな性質が発現するための重要な構造的特徴となっています。この非対称な人工結晶とそれを反転させたもう一つの人工結晶を接続して境界(エッジ)を形成すると、その境界上でのみ光伝播が発現し、境界に沿って一方向に伝播する整流性を獲得します。この人工構造は金属で構成されており、光は金属表面の自由電子集団の粗密波(表面プラズモン)に変換され、ナノスケールに圧縮されて伝搬します。本研究グループは世界に先駆けてこのトポロジカルに保護された光伝搬をナノスケールで実現し、電子顕微鏡によってその伝播を直接可視化することに成功しました。

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